伊勢系・肥後系・江戸系を中心に日本古来の品種ばかり200種・2,000株が咲き競います。
見頃を迎える6月上旬から下旬には、白虎池上に「八ツ橋」が架かり一層の風情が増します。
孝明天皇御製
おのつから 置そふ露の 玉かつら
かけて千世へん 菖蒲草かも 『此花集』
いずれがアヤメかカキツバタ
似たものどうし、どちらがどうかと判断に迷う場合のたとえに「いずれがアヤメかカキツバタ」 という言葉が使われます。
その出所は諸説ありますが、南北朝時代の書『源平盛衰記』に、源三位頼政が大勢の美しい官女達のなかからの嫁探しをする際、はたと困惑して「五月雨の 沢辺のまこも 水越えて 何れ あやめと 引き添わすらむ」と詠んだ時に、あやめ御前がこれに応えて二人がめでたく結ばれたという故事があります。
●カキツバタ 杜若 アヤメ科アヤメ属
日本に産するアヤメ属の仲間で最も古くから親しまれて来たのがカキツバタです。
在原業平が三河の国に旅をした時に杜若を詠み込んだ有名な歌に
唐衣 着つつ馴れにし 妻しあれば
遥々きぬる 旅をしぞ思ふ
という秀歌が『古今和歌集』にあります。そのカキツバタの咲く湿原に掛けられた板橋が八橋で、京銘菓の名前ともなっています。
太田の沢のカキツバタは紫、深泥が池の浮き島のカキツバタは白、平安神宮中神苑には光格 天皇御遺愛の白地に紫斑の珍種「折鶴」があります。
どうせ一度は、来て見ておくれ、年に四季咲くカキツバタ
と民謡にも謡われている、左京区広河原には、天然記念物にも指定されている雪の中でも咲く珍種のカキツバタがあります。
●アヤメ 綾(文)目 アヤメ科アヤメ属

栽培起源は不明ですが、北半球に広く分布しており、外花被(ガク)の基部に網状斑つまり綾になった斑目があることからアヤメと言われています。
●ハナショウブ 花菖蒲 アヤメ科アヤメ属
我が国で品種改良された純国産の園芸種で、その原種はノハナショウブと言われています。
その起源は不祥ですが、約800年前、慈円僧正が
野沢潟 雨やや晴れて 露おもみ
軒にそよなる 花菖蒲かな
と詠んだ歌が『拾玉集』に載っていることから、かなり古くから栽培されていたようです。
花菖蒲はアヤメ科、菖蒲はサトイモ科で全く別種ですが、葉姿は非常に良く似ています。
ショウブは“尚武”に通じることから、武家に好まれ広く栽培されるようになり、多数の品種が生まれました。
●ショウブ 菖蒲 サトイモ科
葉は剣状で幅約2センチ、長さ1メートルに及びます。葉の中央に縦に顕著な筋が一本あり、花菖蒲の葉と似ています。湿地に群生するサトイモ科の多年生植物で、初夏に50センチ程の花茎を伸ばし、頂部に黄緑色の花を多数密集させた肉穂花序をつけます。
菖蒲は葉の基に芳香があり、5月5日に御所の各棟の屋根に2本の菖蒲を挿す行事がありました。これが一般に広まって、端午の節句となり、軒にヨモギと剣に似た菖蒲を挿して邪気を祓う風習が生まれたようです。漢方では菖蒲の根茎を乾燥させた“菖蒲根”が健胃剤として用いられています。
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